10月10日

御嶽～細久手

（7：20）

細久手宿、大黒屋の格子窓から向かいの公民館が見える。今日もいいお天気だ。

7：35　　
御嶽宿までの１１．８キロを約４時間かける予定で宿を出発。

一本道の街道沿いに民家が並ぶ細長い集落に往時のにぎわいの跡は残っていない。

公民館前の掲示板に貼られた広重の浮世絵の下に宿の解説があり、
それによると、大湫から次の御嶽間が四里半と長かったため、１６０６年、尾張藩によって設置された七軒屋とよばれる仮宿がこの宿の始まりであった。放火による焼失後、1６１０年正規の宿、細久手宿として再整備されるも、その後も３度も大火に見舞われたとある。
天保１４年（1843）当時、宿長約４０８ｍ、人口２５５人、家数６５軒、本陣１、脇本陣１、旅籠24。
現在の町並みは安政の大火（1858）以後に形成され、地下用水路なども設けられていたようだ。

大黒屋に向かって左隣にある簡易郵便局の先の空き地(右下草地）あたりが本陣だったらしく、現在は一本の標柱が建っているのみ。その斜め向かいバス停の奥の空き地が脇本陣跡と聞いた。
宿は江戸方から上町、中町、下町とあり、上町と下町に弓形の曲がりが設けられた。大黒屋、本陣、脇本陣辺りは中町になる。

宿を抜けると細久手坂のゆるやかな下りとなる。坂の途中には穴観音や津島神社の小さな祠が祀られている。丁寧に祀られてきたことがうかがえる。

やがて、県道の分岐に差し掛かるが、左の土岐への道を分けて御嶽宿方面は直進する。

かつて人足達が荷物の扱う順をくじで決めたという｢くじ場跡」や馬に水を飲ませたという馬水池を通過。急坂を下り、平岩辻で県道を横断、西の坂口へ向かう。(平岩辻あたり）

西の坂口の道標にしたがって土道に入っていく。

秋葉坂の三尊石窟

鴨之巣の一里塚まで約１キロの山道を行く。
途中、斜面から旅人を見守るように建つ馬頭観音や、鎌倉街道への追分道標、牛おいが盗賊に斬られた所と伝わる「切られ洞」の石碑などを確認しながら、進む。

8：37　鴨之巣の一里塚

地形の関係で両塚がずれている。日本橋より９３里目。塚の上からは鈴鹿連峰、伊吹山、北アルプス、そして尾張の海まで眺められたということだが、今は木々が茂り周囲の様子も変わったからか何の展望もない。

一里塚の先の町境で御嵩町に入ると「くじあげ坂]の下りとなる。<br>
途中に祀られた道祖神、このあたりでは石仏は石窟に収めるという風習があるのだろうか。

くじあげ坂の緑の中を行く。

坂の途中に石垣を残すだけとなった山内嘉助屋敷跡があった。酒造場を営む豪商だったらしい。西の坂の上下を越えると道は民家の軒先を通り山間の静かな集落、津橋へ出る。

津橋：津橋の下を流れるのは津橋川、細い流れでその周辺に田園が広がっていた。

かつては間の宿だったという津橋集落

津橋の集落を抜けると物見峠の登りが始まる。（諸の木坂という）

物見峠を登りきった所に馬の水飲み場跡があり、その先に右に登る階段が付いている。

登ると、視界が開け、東屋が建っている。
和の宮の休息のために御殿が造られたところから御殿場というらしい。休息用御殿だろうからどんなものだったんだろう

展望台からは東に恵那山、北に御嶽山、中央に笠置山が望めるとあるが、この日は雲多くかすんでいて肉眼で僅かに中央の山が確認できる程度だった

峠から先は謡坂の下りが始まる。

昔旅人の喉を潤した｢唄清水」がわき出している。残念ながら今は飲用不可。

竹林の中を抜け、謡坂の集落へ入る。このあたりでは竹炭が作られるようだ。

10：00　一呑の清水
岐阜県の名水５０選に選ばれているという湧き水は、その清水が和の宮降嫁の際に野点に使われたということだ。街道沿いにはこのように和の宮の足跡が多く残っている

少し県道を進むと路傍に「十本木立場跡」の標石があり、中山道はその先で県道を離れ左の脇道へ。

その先には日本橋より９４里目に当たる「謡坂十本木の一里塚」の標石があり、復元されたとあるが草に覆われはっきりとは分からない。

ここは広重の浮世絵｢御嶽」の画材となったと考えられている。謡坂を上ってくる旅人と右手には木賃宿が描かれているが、この空き地に木賃宿があったと想像するとまさにこの地だ。

十本木茶屋跡から先は謡坂石畳の下りになる。
この坂は謡坂から西洞集落を経て行く西洞坂（牛の鼻かけ坂）へと続く。あまりの急坂で苦しさを紛らわすのに歌を歌いながら坂を登ったというところから「うたうさか」と言われるようになったのだとか・・・私なら声も出ないという気はするが・・・。下ってみて、逆コースはさぞ、きついに違いないと思いながら歩いた。

途中、右手に｢マリア像」という石碑が建っている、なんだろうと右の小路に入ってみる。真新しい教会と白いマリア像を確認。この地で、仏教遺跡に摸した隠れキリシタン遺跡が発見されたとのこと。

もとの道に戻りしばらく行くと石畳は終わり広い車道に合流。

10：30　耳神社

道路から狭い石段を数段登った所に石鳥居があり、その奥に小さい社が建っている。耳の病にご利益があるという耳神社。願をかけ、右に供えられた錐を一本借りて耳に当て、もし良くなったらお礼に錐をお供えするらしい。

耳神社の先で、標識に従って左の小路に入る。やがて道は山道となる

さらに急な下りに差し掛かる。(牛の鼻かけ坂）
荷牛の鼻がこすれてかけるほどの急坂だと言われるほどの急坂

下り終わると視界が開け、田園地帯に入る。セイタカアワダチソウの黄色い花が風に揺れている。

畑を眺めながら井尻村の村道をのんびり歩く。中山道の標識を頼りに進むとやがて国道２１号に合流する。右折してすぐ、右手の畑中に東屋に収まった大きな石碑が見える。

和泉式部廟所
式部は東山道をたどる途中、御嶽のあたりで病に倒れこの地で没したと言われている。

国道を進む。井尻交差点で二手に分かれるが、なおまっすぐのびる１４２号を一キロ近く進むと左の角に石柱道標「右御嶽宿、左細久手宿｣に出あう。御嶽宿は近い。夏に京方から入った御嶽宿に今回は江戸方から入ったことになる。

11：30御嶽宿到着。(本陣）・・・・宿内の詳細は７月に西から歩いて来た時に。

前回(７月）は暑さのためにスル―した国道２１号線沿いの鬼の首塚へ立ち寄っていくことにした。

御嵩駅から北方向に歩き、北屋敷地区、西屋敷地区を通り抜け伏見から来た道、国道へ出ると
間もなく右手にその塚はあった。墓碑に関の太郎と刻まれている。鬼岩に住む関の太郎は悪の限りを尽くし人々に恐れられたが蟹薬師の「祭礼日に女装して現れる」とのお告げによって打ちとられた。首を京へ送る途中、落ちて動かなくなったのでここに埋めたという伝説が残っているそうな。
傍らに、それにちなんではいないが、正岡子規の句碑も立っていた。

「草枕　むすぶまもなき　うたたねの　ゆめおどろかす　野路の夕立」

今回は、石畳あり、落ち葉に覆われた土道あり、ざれた小石道あり、舗装道あり、上り下りの繰り返しありで変化にとんでいて快適に歩けた。また山中ゆえか市街地ではほとんど失われてしまっている一里塚も残っていて、昔の旅人が歩く目安にしていたことも体感できた。

途中、馬頭観音など石仏が多かったのも特徴だと思った。しかも野ざらしだけではなく石窟に大切に収められているものも多く、往時、人の往来にいかに牛馬が役立っていたかがうかがえた。

御嶽宿

おことわり：浮世絵画像は合同出版「木曽街道六十九次」より。