10月16日

美江寺から加納

美江寺～河渡

今回最終日は、美江寺からJR岐阜駅に近い加納宿までの約１０．５キロ。
９時３０過ぎ、美江寺駅下車。メインは長良川越えなので天候に恵まれたのはなにより。

美江寺駅近くの田園風景から

沢山のビニールハウスが並んでいる。中には多肉植物がいっぱい。幾筋ものハウスでブームの多肉栽培をしているようだ。

地名は江戸日本橋より５６番目の美江寺宿に近いということで、美江寺五六町。川の名も五六川
江戸からの旅人はこの橋を渡れば５６番目の宿に到着というわけだ。

駅から１．５キロほどの本田西町に高札場跡があり本田代官所跡も残っている。設けられたのは１６７０年。幕府直轄地代官だった野田三郎佐衛門が陣屋を設けたのが始まり。周辺には旧家らしいたたずまいも残っている。本田には当時立場があったという。

秋葉神社や延命地蔵が祀られたお堂をみながら進み、糸貫川を渡る。この川の流末は天王川と合して長良川に注ぐらしい。かつては鶴の名所で。かつては鶴の名所で（いつぬき川）の表記で和歌にも読み込まれ、枕詞として使われた。たとえば、
［君が代は幾万代かかさぬベきいつぬき川の鶴の毛ころも」今は・・・と見渡すと遠くにシラサギが一羽舞いおりていた。

馬場地蔵堂

平安時代に荘園であったという生津縄手。いよいよ長良川も近いらしく足元のマンホールデザインは鵜をモチーフにしている。

天王川
川に浮かぶのはコウホネ。黄色い花もそろそろ終わり始めたようだ。天王川は古くは柚木川といい、徒歩（かち）渡しであった。徒歩渡しとは川越人足が旅人を肩車や蓮台に乗せて川を渡らせる渡河方法で、川の水量によって川越賃銭が決められていた。たとえば最も安い水膝（川の深さが膝まで）は一人銭６文、最も高い水脇（川の深さが脇まで）が一人銭６０文といった具合だ。。

川を渡ったあたりが河渡宿の西口(京口）河渡宿到着だ。ここから長良川一帯が河渡宿。

河渡宿碑
碑の側面に「一里塚跡」刻まれている。日本橋より１０７里目。
奥には松下神社がまつられている。文化１２年ごろ、この宿は未曽有の洪水に見舞われ、時の代官が幕府の助成をえて宿場全体を約１．５m地上げ。宿人はそれに感謝し、代官の名をとって神社を建立したとのこと。

馬頭観音堂
長良川土手の下にあり向かいには木製黒塗りの大きな常夜灯が立っていた

土手上の小さな祠から。
ここからは河渡の町並みが見渡せる。が、この地に立って、さて本陣はあったのだろうか～～土手のなかった時代、川岸からすぐに河渡（こうど）宿の町並みが続いていたようだが、現在は宿場の中心部が河川敷と堤防の中に消えてしまったのか本陣跡がどこにあったのかもわからない。河渡宿は長良川西岸に位置し、米、塩、木材の集積地として栄えたが、宿としては川止め以外は通過の旅人が多く鄙びていた。
天保１４年（１８４３年）当時の宿長さ東西３町（約３２７ｍ）、人口２７２人、家数６４軒、本陣１、脇本陣なし、旅籠２４軒で、美濃路１６宿中、３本指に入る小規模の宿場町だった。ただ、河渡の渡しの渡船場という場所柄、長良川が増水し川止めになった時には、多くの旅人がここで足止めをくらったようで旅籠は家数の約４割にあたる。
この祠のあたりが「河渡の渡し跡」で、渡しの権利は河渡宿にあり、二隻が常備されていたという。渡し賃は一人６文、荷物が1８文、武士は無賃というところは現代からすると腑に落ちないところだ・・・

長良川
岐阜県郡上市の大日ヶ岳に源を発し、三重県を経て揖斐川と合流し、伊勢湾に注ぐ木曽川水系の一級河川。１３００年ほど前から行われているという鵜飼でも知られる。

河渡橋の上から川を眺める。今でも観光用だろうか渡し船が行きかっている。

橋を渡ると、河渡東。中山道は土手を上流に向かって少し歩く。広い河川敷ではまるで春の様な日差しの中でチョウが舞っている。ゆったりした流れを見ながらここで昼食をひろげる。

河渡宿から加納宿へ

鏡島湊跡
案内板によると、豊臣時代以前より長良川と伊勢湾を結ぶ商品流通の要として重視され、江戸期、中山道の公道化とともに利用者も増えたが、時代が下がるとともに次第に廃れ、明治時代には役割を終えた。といった解説があった。

金華山遠望
上流に目をやると、遠くに金華山（稲葉山）が見えた。ズームをあげると山上の城を確認、きっと岐阜城に違いない。

長良川の土手を下りた中山道は鏡島、本庄、と進み加納へ約６キロの道のり。途中、特に興味を引く所もなかったので、カメラは使わず歩きに徹しよう。

「鏡島の弘法さん」と親しまれた乙津寺の寺標がある。寺の裏手から河岸に下りると[小紅の渡し]があるそうで、河渡の渡しが橋が架けられたことで終了したのに対し、こちらは今も現役。時間があれば乗ってみるのも楽しいだろうと思いながら先を急ぐ。更に２０分ほど歩くと多羅野八幡宮門前を通る。そこは立場でだらり餅（あんころもち）が評判だったとか・・・。

２０分後、三面六臂馬頭観音が祀られているという医王寺門前に立った。道沿いにあった観音堂は真新しくて風情はなかったが、覗き見た石仏は中々興味深いお顔立ちだった。
(画像はその一体）

加納の一里塚
大正元年の暴風で崩壊したとかで今は、その後に建てられたらしい碑があるのみ。日本橋より106里目

西番所跡
宿の西口(京口）・・・長良川から１時間３０分

加納宿街道筋
このあたりから路面が美しい。宿であることを示しているのだろう。中心部に入る手前左手にJR岐阜駅が見える。街道には天神祭の幟がかけられている。御祭りは近々あるんだろうか。
脇本陣近くにある天満宮は加納城の守護神。
城主、松平丹波守が播州明石から連れてきた傘職人が始めた加納傘は宿の名産品となっている.
美濃和紙を使った和傘で、かつては並べて干す光景がこの地の風物詩だったようだ。

宿の中心地に当時の面影はないが、本陣跡を始め、脇本陣２、問屋場1、当分本陣などの碑が立っている。本陣跡の碑の脇にはそこに宿泊したという和宮の歌がきざまれていた。
「遠ざかる都と知れば旅衣一夜の宿も立ちうかりけり」

二文字屋
変わった屋号の鰻屋。１６２０年創業の旧旅篭二文字屋跡で、左甚五郎作の
[月夜に河原で餅をつく兎]の欄間が残っているそうだ。

街道は大きな交差点に出る。陸橋の下に加納城大手門跡の標識と宿の道案内

中山道はここで左折。
その先の水路手前には、高札場跡の表示があった。街道歩き、今回はここで切り上げ。

岐阜駅方面へ引き返す前に、加納城へも足を運ぶ。

加納城石垣
加納城は文安年（1445）美濃国守護土岐氏の執権斎藤利が加納の東南隅に築城。その城跡に慶長６年（1601）に加納１０万石奥平信昌が入城した。広重の版画には城を背景にした参勤交代の様子が描かれている。
石垣に囲まれた中は、現在、市民憩いの場として芝生が植えられた公園になっている。

本陣前を引きかえし岐阜駅に向かう(１４時４０分

英泉の河度　と　広重の加納

河度の版画は長柄川の鵜匠の図・加納の版画は城を背景にした参勤交代。加納城には天守閣がそびえる。

おことわり：浮世絵画像は合同出版「木曽街道六十九次」より。