4月22日 豊郷から鳥居本 前回の続きを歩こうと、近江鉄道、豊郷駅に着いたのは10時５４分。午前中に高宮の手前、無賃橋辺りまでと決めて歩きだす。曇ってはいたが傘をさす程でもない天気。 駅の近くには、遣隋使や遣唐使を歴任したという犬上朝臣の屋敷跡がある。 愛知川宿と高宮宿の間に位置するこのあたりは旧石畑村で、那須与一の次男、石畑民部大輔宗信が創建したという八幡神社境内には石畑一里塚跡と記した石碑が立っている。 昭和１２年丸紅の専務古川鉄次郎の寄付によって建てられたという豊郷小学校旧校舎群。ヴォ―リズ設計の鉄筋造り。内部見学可能だったので講堂などを見学。 ★このあたりは｢やりこの郷ともいう。この地が干ばつに見舞われた際に｢大木の上から矢を放てば落下点から水がわく」という阿自岐神社のお告げにより湧いた清水を｢矢池」。矢を放った大木を｢矢射り木」と呼んだがそれがなまって「やりこ」となったという言い伝えがあるらしい。近くに百済から渡った阿直岐王にちなむ阿自岐神社の社標も確認できた。 またその先を「四十九院」という。行基がこの地に４９の寺院を建立したことに由来するらしい。その地の特徴を表す地名というものには味わいがある。 犬上君にちなむと思われる犬上郡と彦根市の境を過ぎる辺り、欅並木の緑が美しい。昔の旅人にとってはこういった並木も街道を示す目印になったことだろう。 近江鉄道を右に見ながら田園地帯をゆくと僅かに残る松並木の中に、彦根市のモニュメントが建っている。麻の原料を背負った女性、菅笠の旅人、そして近江商人。石柱には｢おいでやす彦根市｣の文字。お天気が良ければ鈴鹿の山並みが見えるはずだが・・・ 田園地帯をゆくと小さな祠の下に｢産の宮井戸」とその傍らに[足利氏降誕霊地]と刻まれた手水鉢がある。説明板によると、「足利義詮が京へ上る際にともなった妻妾がこの地で男子を産んだが子は死に、彼女は尼となってこの地に庵をむすび、共に残った家臣たちは葛籠作りをして生計を立てた」とある。以後、この地は籐細工、葛籠、行李、団扇が名物の立場となったようで、今なお、葛籠町という。 「これより多賀道」と彫られた道標の近くで、昼食弁当を広げる。広重の浮世絵にも描かれた犬上川も近い。 無賃橋 天保３年(１８３２年）彦根藩が近江商人に命じて募金によって架橋。渡り料を無賃とした。下を流れるのは鈴鹿山脈に源を発する犬上川。 渡ったあたりが、高宮宿の西(京）口。 円照寺 １６１５年。夏の陣に向かう家康が休息したという腰掛石が残っている。今は朽ちた木の木陰でもあったのだろうか・・・。 高宮本陣跡・・・・残っているのは門のみ。 多賀大社大鳥居・・・多賀信仰は秀吉が大政所の延命を、春日局が秀忠の病気平癒を祈願したことで盛んになったという。高宮は多賀神社の門前町としても栄えたという 鳥居の向かいにあった提灯店 布惣跡≪宿駅座楽庵≫・・・高宮布(麻）問屋跡で当時は蔵が７つもあったようだ。向かいの高宮神社から眺めると大きな屋根が印象的だった。 近江鉄道の高宮駅の踏切を超えるとまたも多賀大社常夜塔があるが その辺りが高宮宿の東(江戸)口。 彦根道道標、石清水神社を過ぎ、芹川まで約１キロほど。 芹川の橋下には万葉歌碑がある。この川は古くは不知哉川（いさや川）とよばれて歌枕になったという。近くに壬申の乱の戦場ともなったという大堀山があるがこの山も古くは鳥籠山（床の山）と言われ、歌枕になっているという。 さらに１．５キロほど進むと聖徳太子を祀る原神社がある。この日は氏子たちによってお祭りの準備がされていた。お神輿や日本一だという太鼓も見せていただく。緑豊かな境内には芭蕉の「ひるがおに昼寝せうもの床の山」にちなむ「昼寝塚」などがあった。 東海道新幹線高架橋をくぐるとすぐに名神高速を背景に立つ小町茶屋跡、小町地蔵と続く旧小野村。右手には東名高速、左手には新幹線が走るその中ほどを中山道は通っている。ここは小野小町ゆかりの土地らしい。出羽郡司、小野美実が奥州に下る際に小野宿に泊まりここで生後間もない女児をもらいうけた。この子が小野小町と言われている。 ここは小野町　古宿」という標識を過ぎ彦根道追分道標を過ぎると、鳥居本宿。 本陣跡 鳥居本本陣、脇本陣共に、標識のみになっているが、周辺には往時を思わせる看板が掲げられている。合羽所松屋、合羽所木綿屋。ちなみに、鳥居本では文化文政年間１５件の合羽所が軒を連ねていたという。始まりは享保年間で、こうぞを原料とした和紙に柿渋を塗り込めたもので雨の多い木曽路に向かう旅人に重宝がられたという。 今日はここまでと思ったが先に大きな建物が見えるので行ってみた。 赤玉神教丸有川家で万治元年（１６５８）創業の薬屋さん。赤玉神教丸は食あたり、下痢、腹痛に効く妙薬だという。ちょっと興味があるので小さい袋を買ってみた・・・その色合いから、やっぱり余程でないと飲みたくないという感じ・・・ 立派な建物を周囲から眺め、この日の街道歩き終了。　　　（16：30分） 少し引き返し、鳥居本駅から、ホテルを予約した彦根へ。 高宮 高宮の南を流れる犬上川の南岸から宿場を望む。 平時は旅人は仮橋を渡っていた。この図では橋板がはずされ 水のないところを渡っている。１８３２年には無賃橋が出来た。 高宮布の原料の麻を運ぶ女性が描かれている。 おことわり：浮世絵画像は合同出版「木曽街道六十九次」より。