3月23日 武佐から愛知川さらに、豊郷まで 昨日の続きを歩こうと、ホテルのある近江八幡から近江鉄道で一駅の武佐駅へ引き返す。 ☆八風街道との交差点を通り、早速街道歩きを開始。本陣前についたのは9時15分。　　 ☆本陣の横、伝場所のあった郵便局前の少し先に、１５代目の金左衛門が伝場所取り締まりを務めたという大橋家役人宅跡がある。宿内最古の建物だというが外観が美しく修復された立派な建物だ。 信号の角に常夜灯が立ち、享保１３年ベトナムより吉宗に献上された象がこの武佐に宿まったというエピソードを描いた看板が立てられていた。さらに進むと ☆旧八幡警察所武佐分署・・・明治１９年築の洋館で有形文化財。 ☆脇本陣跡・・・奥村家が務めたが現在は町会館 街道筋には板塀の家が多く、建物は和風で外壁は杉板張り。塀は写真の様に杉板とベンガラ塗りで仕上げられている。特にいわれはないようだがこの地方独特だと思う。それにしても何とまっすぐな道だろう・・・ 武佐宿の氏神である牟佐神社、西生来（にししょうらい）の一里塚跡、泡子延命地蔵尊遺跡のある通りは旧街道の面影が残り快適に歩ける。周りには田園が広がり、右手遠くを時々新幹線が通りぬける。 亀川の信号を過ぎると安土町西老蘇地区。足元のマンホールもＡＮＺＵＣＣＩとちょっとなまった表示のあるのがおもしろい。調べるとこれは宣教師たちが安土をヨーロッパに紹介したポルトガル語の表記ということだ。図柄の永楽通宝は信長の旗印の一つ。ＡＮＺＵＣＣＩと書いたからには下水道も横文字（こちらは英語）というわけだ。 ☆緑苔園・…この住宅の中にその庭はあった。戸が開いていたので覗いてみたが、小さいながらすっきり整った庭を拝見できた。 緑苔園 道を少し左に入ったところに家康の家臣となった根来衆が領した根来陣屋跡があった、その背後には深い森が広がっている。 ☆老蘇の森・・・７代、光霊天皇の頃一帯は無住の地だったが石辺大連が杉、松、桧を植えたところたちまち大森林ができた。大連は森の主となり百数十歳まで生き延びたという伝説がありよって、老蘇の森と呼ばれたらしい。現地の説明板には、この森からとれる柴や、落葉が燃料として長くこの地に役だったとあった。 ☆奥石神社 石辺大連が天児屋根命を祀り繖山をご神体としたとある。地元の信仰が厚いらしく、この日もお宮参りの家族と出会った。 辺り一帯は野が広がっている。国道と合するところに武佐宿へ一里、愛知川へ一里半の道標がある。新幹線の高架が迫り街道は国道８号を地下道で横断、観音正寺への道標を見過ごして、大きく右折。新幹線にそった国道８号を歩く。 再び旧道に入り、１０分ほど行ったところに〜〜 ☆清水鼻の名水。ここは立場で、雛あられ風の［焼き米ハゼ］が名物だったらしい。 道は再び８号に出る。五個荘だ。天秤棒を担いだ近江商人のモニュメントが見えてくる。そこをてんびんの里というらしい。旧道に戻る。８号を歩くのはうんざりだが、旧道に入るとほっとする ういろうが名物だったという茶屋本陣は見逃してしまったが、辺りには旧家の茅葺屋根が印象的。よく手入れがなされている。 ☆市田庄衛門本宅跡・・・呉服繊維商として京、大阪で活躍した近江商人で家は京の町屋風。明治初期に建てられたようだが、内部見学を期待したがあいにくしまっていた。 ☆古い町並みの残る道を進むと、３００年にわたって梵鐘鋳造を家業としてきたという「西沢梵鐘鋳造所」前を通る。野洲の粘土や琵琶湖の砂が鋳造に適していたのだとか・・・ 時刻はちょうどお昼時となった。道沿いにある大きな五個荘中央公園内の築山でお弁当を広げる。「小幡でこ」と呼ばれる土人形窯元や、芭蕉の句碑のある厳島神社を見ながら進むとやがて、愛知川に達する。（13：20） ☆愛知川・・・近江一の大河で源は鈴鹿山脈で流れは琵琶湖に注ぎ込む。出水の度に多くの人命が失われ別名「人取り川」というらしい。愛知郡と近江市を分けている。この川の渡し風景を描いた広重の浮世絵があったはず・・・どこにも見あたらなかった。 今は、国道にかけられた御幸橋を渡る。天保２年に板橋を架け無賃としたが、明治１１年の明治天皇御幸の際に馬車も通れる丈夫な板橋を架け名も「御幸橋」となったそうだ 橋を渡ったところに天保９年無賃橋の守護神を勧請した祇園神社がひっそりと立っている。 ☆愛知川宿のゲート ☆旧旅篭、竹の子屋・・・現在は竹平楼という料亭 ☆脇本陣や高札場跡に続き本陣跡は洋風建物に変わり、今は日本生命愛知川営業部が置かれている ☆宝満寺・・・親鸞手植えの紅梅が美しく咲いていた。 ]☆ポケットパーク・・・・ここに来て広重画のレリーフを目にする。書状集箱も再現されていた。 愛知川宿には創業２００年近くの醤油や漬物を扱うマルマタ商店、創業1５０年の和菓子店しろ平老舗など、老舗商店も残っており往時のにぎわいを感じさせる。東山道時代からの宿駅で近江麻布の生産や集散地としても栄えたとのことだ。 愛知川宿の街灯 ふたたび江戸側からのゲートをくぐっていくと愛知川小学校があり、沓掛という地名。 延喜式に記載されているという石部神社、薬師堂、普門寺など社寺の並ぶ通りを行くとやがて宇曽川にさしかかる。 ☆宇曽川。橋の名を、歌詰橋という。 橋手前の説明板には「９４０年、藤原秀郷に討たれた平将門の首級を京に運ぶ際、この橋でその首は転げ落ち秀郷に襲いかかった。とっさに歌を読んでほしいと首に頼むと首は歌に詰まって橋の上に落ちた。以来この橋を歌詰橋とよぶようになった」といった伝説が書かれていた。 橋を渡ると足元のマンホールの図柄が変わっていた。すでに豊郷に入ったということだろう。地名はないが中ほどに踊り子さんがデザインされている。 江州音頭発祥地・・・お経に節をつけたのが始まりとされている。発祥地の後ろに行基創建の千樹寺がある。たしか、大阪の実家近くでも盆踊りは江州音頭と聞いたことがある。行基の足跡と関係あるんだろうか？ ☆豊会館・・・豪商、藤野喜平屋敷跡（又十屋敷）の前を通る。又十という呉服屋から廻船問屋に転じ、明治にサケ缶の製造を始め、現在あけぼの印缶詰へと受け継がれている。この日は休館日だったが、本屋と書院、庭園、調度品などが見れるようだ 時刻は１５時を回った。今日の最終予定、伊籐忠兵衛旧宅見学は４時までと思いだして急ぐ。 ☆伊籐忠兵衛記念館・・・初代忠兵衛は１１歳（１８５３年）で始めた高宮布の行商から身を立て、大阪で呉服太物商の紅忠（改め、丸紅伊籐本店）、つづいてラシャの直輸入を企てるなど多角的な経営を企て伊籐忠商事を発足させた。その初代と、この事業を受け継ぎさらに発展させた二代目忠兵衛の足跡を紹介している。二人の愛用の品や様々な資料が展示され、ビデオによる解説もあって、総合商社への道を拓いた足跡をたどることができる。 この見学を通して、商社、伊籐忠と丸紅はともに11歳から身を立てた伊籐忠兵衛に始まることを知った。 ≪メモ≫ ★今回の街道に残る見どころは主に近江商人に関するものと東山道時代のものが多かった。現在の街道筋には民家の玄関先におおきな信楽焼の狸。信楽が近いからだろうか子供ほどの大きさの狸が特に野洲地域では軒並み飾られていた。そして、安土地域を中心に板塀の家が多かった。ベンガラと焼杉のツートンカラーで独特の雰囲気があった。材質から防腐、耐火ということだろうか。弁ガラ格子はよく見かけるがこれは珍しいと思った。 　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ★出あった街道をゆく人・・・北海道からきて、伊豆を巡り、そのあと中山道を歩いているという少し年配のご夫婦。ノルディックウォーキングといったいでたちだったがマイペースという感じでのんびり歩いておられた。もうお一人は犬山を起点に先ずは京を目指し、終わったら日本橋を目指すつもりという同年輩の男性。お宅が犬山ということでアクセスは車というのが便利そうだった。 ★私の歩数はこの日も２６０００歩（街道のみ） 愛知川 町人５人が中心になってかけた橋で無賃であった。 おことわり：浮世絵画像は合同出版「木曽街道六十九次」より。