熊谷宿～鴻巣宿

10月10日午後：熊谷駅から吹上駅

10月10日午前：吹上～

～北鴻巣

北鴻巣から鴻巣宿を通り一駅先、北元駅まで

10月9日午後　「熊谷」から鴻巣への途中駅「吹上」まで。

～～北陸新幹線内はたくさんの外国人客。どうしたんだろうと思っていたら同じ熊谷駅でどっと下車。この日はちょうどラグビー世界選手権、アメリカとアルゼンチンの対戦が熊谷であるということを知った。駅前には熊谷のうちわ祭りの山車が出てにぎやかに歓迎ムード。

喧噪の駅前を抜け、ホテルに荷物の一部を預け、星川あたりから前回の続きを鴻巣方向に向けて、出発。
上越新幹線のガードをくぐり、秩父鉄道の踏切をわたり南東方向へ進む。

左手曙公園内にあったのは小さな祠と記念碑などが立つ八丁の一里塚
解説には「久下新田の一里塚からここまで一里ある。いま英泉描くところの「八丁堤の景」という浮世絵があって当時の風景や風俗を偲ぶことができる」とあった。

500mほど先のY字路を左に進みさらに右に折れると小さな熊久橋がある。このあたりが久下直光と熊谷直実の所領争いの境界であったところから橋の名がついたという。
その橋の下を流れるのは元荒川で、その清冽な流れに天然記念物のムサシトミヨがかつてはざるですくえるほど生息していたという。いまでは絶滅危惧種ということで、川縁から覗いたが水草ばかりで見つけることはできなかった。

東竹院

久下次郎直光が創建。一族の墓があるらしいが、門は固く閉ざされていた。扉の寺紋は久下の紋「一番文字」。
源頼朝挙兵の際に一番にはせ参じたというので賜ったという紋。

左手の屋敷の塀から解説板が突き出ている。「みかりや跡」とある。
旅人相手の茶店で、しがらきごぼう、久下柚餅子、が名物だった。忍藩の領主が鷹狩りの際の休息にも使ったので「御狩屋」と呼ばれたらしい。

御狩屋跡を背に堤へと坂を上る。空に向かって上るのどかな風景だ。

右に荒川の河川敷が広がる。秩父の山々を遠望する気分のいい土手道だ。

久下の渡し冠水橋跡の碑
渡し場には久下新川河岸があり舟運で栄え、昭和には冠水橋が架かり平成15年まであったという。

この先、旧中山道へと土手を降りる。角には平井権八にちなむ権八地蔵が祀られている。
平井権八とは、歌舞伎の「鈴ヶ森」に登場する強盗らしいがその詳細を知らない。地蔵様となった権八は今では信仰を集めているらしく、地元の方がお参りをしていた

このあたりを久下新川村というらしく、鎌倉時代には久下直光の領地で江戸時代に忍藩領。荒川の反乱で悩まされたが川筋の改修が行われ江戸との舟運が発達。物資の集散地として栄え、明治時代には養蚕が盛んとなったという。
そんな歴史を物語るのが先の久下冠水橋であり、この旧中山道沿いにあった新井家という旧家でもあった。

村の鎮守、久下神社

道なりに進み、上り坂左手に明治45年に建てられた久下堤碑を見て再び堤に向かう。並行して元荒川、旧道もあるが、さわやかな堤の上を行く。途中、海まで72キロの標

さらに行くと土手の左手にマンション群があり、八丁の一里塚に書かれていた「久下の一里塚」があるらしい。堤上からは確認できなかったが土手下の旧道にあり、日本橋より15里目にあたるらしい。

決壊の跡碑
昭和22年のカスリーン台風で決壊し付近一帯に甚大な被害を与えたとある。
その後どのように対策がなされたかも含めその状況がパネルで紹介されていた。

付近の堤の名称は「熊谷八丁堤」とも「久下の長土手」とも呼ばれるようだが、景勝地であると同時にその時代の勢力争いの跡や、川の氾濫の跡など物騒がせの地でもあったようだ。Y字路を旧道へと少し下ると小さな祠。大曲八幡がひっそりと建っている。1715年の青面金剛像、1666年の庚申塔がある。

さらに堤に戻り500m先を大きく左へと曲がる。その角にあったのは
再び、平井権八にちなむ権八延命地蔵。
いったいどんな人だったのだろうと解説を読んでみた。地蔵に許しを請ったが結局彼は処刑されたようだ。

通りには鴻巣のマンホールがあった。ここからは（鴻巣）に入ったらしい。

榎戸の中山道道標

左折したところでご夫婦が水を汲んでいるような姿が目に入ったので行ってみた。
榎戸堤というらしく、脇に水をくみ上げる施設があるようだ。そして下を流れるのはかなり川幅の増した、元荒川。

道はまっすぐ北東へと伸びている。やがて陸橋に行き当たり、超えると
中山道間の宿の碑

ゆうびん局の前を進むと左手に吹上神社がある。吹上の鎮守だがあばれ神輿で知られているという。なるほど境内に小さな神輿が納められていた。

道は吹上本町、吹上駅前、さらに箕田追分へと続く。
英泉は吹上辺りからの富士遠望の浮世絵を残している。

今日の予定は吹上駅まで。傾きかけた日を受けて駅に向かった。

英泉の浮世絵

八丁堤の景

吹上富士遠望

吹上～

～北鴻巣

10日午前　

北鴻巣から鴻巣宿の先、（北本駅まで）

吹上駅から北鴻巣の間には前砂の一里塚があるが例にもれず、標柱のみらしい。先を急いで4km余りを列車で通過することにした。この朝降り立ったのは北鴻巣駅。ここから中山道へ戻る。街道筋には少し中に入れば寺の古刹も多くあるようだが先を急ぐ旅ゆえ、街道沿いに限って立ち寄ることにした

蓑田追分

道路を挟んで角に地蔵堂が立っている。地蔵立像が安置され、堂ノ前には庚申塔が祀られている。
このあたりは立場茶屋「富士屋」があったという。

地蔵堂を右に見て県道を鴻巣に向かって進む。
武蔵水路（首都圏用水確保のために1965年に完工、利根川から荒川に引き入れた全長4.5キロの用水路）を渡る。

氷川八幡神社
別名綱八幡といい、渡辺綱を祀る蓑田郷、27ヶ村の鎮守。

蓑田観音堂・・・・渡辺綱が978年に開基。本尊は源経基が戦いの際に兜の中にいただいていたという一寸八分の馬頭観音だというが、扉は固く閉じられていて確認すらできない。このあたり、源氏に関連する人名が多く見当たるのはさすがに武蔵の国ということだ。

白山神社…境内に1666年建立の庚申塔などの石仏石塔群があった。

途中、荒川の渡し、糠田河岸を経て松山に至るという松山道を右に分けさらに、高崎線踏切を超えると加美の交差点に至り、道は県道164に入る。歩道上に中山道道標がありいよいよ鴻巣宿だ。碑には桶川宿へ2里4町、江戸日本橋へ、12里18町と刻まれている

日光裏街道を左に分けた先に
朱色の美しい神社がある。鴻巣宿の総鎮守で、「境内の大樹にコウノトリが巣を作りその卵に大蛇が忍び寄ったところコウノトリはこれを突き殺してしまったそれ以来祟りがなくなりこの社を鴻の宮と呼ぶようになったという伝承がある。

鴻巣宿について・・・
鴻巣の地名は「国府の州」、高州、そして鴻の宮の伝説に由来している。
慶長7年（1602年）本宿村(現在の北本市本宿)にあった宿場をこの地に移し鴻巣宿とした。松山街道と日光裏街道の追分を控えて、毎月4と9の日に宿内に市が立つほどにぎわったという。天保14年の記録では家数566、うち本陣1、脇本陣1旅籠58、人口2274人。宿長は17町（1.9km）

田沼家の蔵は明治初期の建築といわれる。このあたりに問屋場があったらしい。

鴻巣駅入り口と書かれた交差点から右（駅方向）へ目をやると
新しい観光案内板と中山道碑。

すぐ先に、脇本陣、本陣、高札場などがあったはずだが、それらしいものは見つからず、新しい本陣跡の碑がぽつんと立っているのみ。

鴻巣御殿跡を探して少し右手の路地を入ってみると、その名残が建物の谷間にひっそりと建っていた。
文禄2年（1593）家康が鷹狩りの際の宿泊所をこの地に建て秀忠、家光の三大が使用したという。元禄4年（1691）御殿跡に東照宮を祀り除地としたとある。

中山道（本町通り）に戻り、さらに東へ

お雛様の町と聞いていたのでその店を探す。店先に華やかに並んでいるという雰囲気を想像したがちょっと意外な街並み。

本庁南交差点脇に、「これより鴻巣宿の碑」ここが江戸口ということだ。通り過ぎてきた宿を振り返る

すぐ先に鴻巣市産業観光館があり、ここには所狭しとひな人形が並んでいた。その制作過程や歴史などなかなか見ごたえがあった。鴻巣宿案内のパンフレットも用意されていて、なるほど、江戸から歩いてきた人にとっては便利な案内所ということなのだと思った。すでに通った後とはいえ、思い返すのにいいので一部いただいた。そして、真っ赤に塗られた獅子頭など、鴻巣の赤物と呼ばれる桐のおがくずで作り赤く塗られた人形もあり、記念にかわいいだるまを購入。

観光館でかなり時間をとったが出て、500mもいけば、鴻巣と北本の境に至る。
北本駅までは量の多い164号線。これといった史跡もない道を4キロ近く延々と歩くことになる。
高崎線の踏切を渡り並行して走る古中山道を歩くことにした。こちらは比較的ゆったり歩けるが、線路に沿った面白みもない道だ。あったのは、小さな馬頭観音と雑草で覆われたような馬室原の一里塚跡くらいだったろうか。

11時50分北本駅着。
この先もまた交通量の激しいだけの道を行くことになるので思い切って桶川宿京口までタクシーを使うことにした。