3月4日 草津から守山、（野洲へ） 草津宿は三条大橋を出た道が東海道と中山道に分かれるところ。 私の2日目は草津から守山、さらに武佐の方向へ中山道をたどる。15時30分切り上げの計画で時間はたっぷりある。 まずは、草津本陣内と草津宿交流館を見て10時30分草津発ということにした。 草津本陣 9時開館の本陣前。一番乗りという感じでゆっくりと内部を見て回る。 玄関には沢山の宿札が立てられていて、松平出羽守、毛利安房、細川越中守などの文字が目に入るが、撮影は禁止。赤い毛氈のひかれた畳廊下を中心に左側と奥に宿泊客の座敷、右角に広く本陣職田中家住居や台所といった部屋割がされている。一室目に展示された宿帳には、皇女和宮、新撰組土方歳三、浅野内匠守、吉良上野介、徳川慶喜らの名が並んでいる。興味深かったのは一番奥の上段の間や、上段雪隠、湯殿など。また台所には沢山のかまどが並び、裏庭をはさんで土蔵などが建っている . 御膳所に皇女和の宮に出された膳の再現が飾られていたが、 現在の食事に比べ意外と質素という感じがする。 草津宿街道交流館 街道や宿場の姿を様々な視点から紹介しようという試みがされ、 町並み模型、旅装束を体験するコーナー、浮世絵刷り体験コーナー、各地の名物を紹介するコーナーなどがあり、けっこう楽しめる。時間もあったので、浮世絵刷りと、ちょっと旅装束をつけて写真を撮ったりして遊んだ。 10：30、いよいよ草津を出発。 旧草津川下のトンネルを抜け、アーケードのある商店街を抜け、最初にたずねたのは 伊砂砂神社 祭神に須佐之男命（すさのおのみこと）・寒川比女命（さむかわひめのみこと）などを祀り、雨乞いに霊験があると伝えられる。創建年代や由緒については不明だが古くは渋川大将軍神社と呼ばれる産土神。 美しい桧皮葺の本殿は、社蔵の棟札によって応仁2年（1468）に建立されたとされ、国の重要文化財。全体的に細身でしっかりとした量感に溢れ、室町建築の作風を伝えている。 往時の人々が身を清めて参拝したという伊佐々川がわきを流れている。 やがて、葉山川を渡ると、可愛いマンホールが目につく。鳥のデザインで「りっとう」と書かれている。草津市から栗東市に入ったということだ。各地域で特色のあるマンホール、どこを歩いているのかを知るいい手掛かりだ。 電柱に「綣・ＨＥＳＯ」という文字もみえる。綣という集落らしい。変わっているので何か由来でもあるんだろうか。 大宝神社 その名前からして古そうな寺だ。 説明板によると、 701年（大宝元年）疫病流行の時､小平井村信濃堂(現在の栗東市小平井)に降臨された素盞鳴尊(スサノヲノミコト)と稲田姫命が綣村(栗東市綣)の、追来神社境内にご鎮座。これにより疫病が鎮まったと伝えられている。長い歴史を経て、大宝神社と呼ばれるようになったのは明治時代。～～とある。 「へそむら」を詠んだ芭蕉の句碑があるというので立ち寄った。 「へそむらのまだ麦青しはるのくれ」近くに「綣」についての説明板も見られた。それによると・・・ 弥生時代からの遺跡が多く出土するところからこのあたりは弥生後期から農耕集落が形成され、周りにできた多くの集落と区別するために当地を「へそ」とよんだとある。また、後年、綣という文字があてられたのはこのあたりで糸作りが盛んだったことから、それを巻きとる道具「綣」を当てた・・・とある。 少し先に大宝神社の飛地境内社、市杵島姫神社があるというので行ってみた。ほんの小さな祠が立っていた。足もとを見るとすでに守山市に入っている。地名は古高町。新撰組の拷問を受け池田屋で御所に放火する謀議がなされることを自白してしまった古高俊太郎の生誕地にちなむ様だ 小野篂作の閻魔像が安置されているという十全寺閻魔堂、住蓮房母公墓（処刑される前に一目会いたいと京からやってきてすでに斬首されたことを知り身を投げ自害したという法然の弟子、住蓮房の母の墓など、時代を超えた史跡が隣り合わせにあるのも古い街道ならではと思える。 今宿の一里塚 日本橋から128番目に当たるという一里塚で、滋賀県内に残る唯一のもので塚木は榎 かつては一里ごとに道両側に松や榎を植えた塚があったが、交通事情が変わったこともあってほとんど取り除かれているというから、貴重なひとつだ　　～解説は(マウス）～ 樹下神社 境内に1832年、伊勢屋佐七が寄進したという、4ｍをこえる常夜灯がある。金毘羅、瑜伽大権現といった文字も刻まれ、旅人の安全を願ってたてられたようだ。 神社横の公園でお弁当を広げる。街道歩きの昼食はどこででもいただけるお弁当に限る・・・なんておもいながら・・・ 土橋 守山宿の京口にあたり、下を流れるのは広重の浮世絵にも描かれた吉川。 瀬田の唐橋の古材を使った公儀の御普請橋だったというが、現在のはコンクリート製・・・ 東門院 比叡山東門院守山寺と称し天台宗に属する寺院。 延暦７年(788年)に 伝教大師最澄が、延暦寺を建立した時、四境にそれぞれに構えたという門の一つで、比叡山の東門として設けられたのが始まり。 桓武天皇がこの寺を「わが山を守り給う寺」と呼んだのが、守山という地名の由来ともなったらしい。 不動明王坐像や石造り五重塔など重要文化財があり、また、朝鮮通信使の宿舎として使われたという高札も残っている。本堂参拝後、庭の片隅に石造り五重塔を発見。たっぷりと丸みを帯びた重厚な塔に年月の経過を見るような気がした。 中山道街道文化交流館 街道筋の町屋を利用した休憩ポイント。守山の名産、和ろうそく屋であったと聞いていたので、興味があったのだが、現在は販売もなくちょっと残念。建物の二階に上がり、三十六歌仙の額などを見て、ガイドの女性としばし世間話などをして館を後にする。 本陣推定地 小宮山九右衛門本陣跡と思われ、横には古井戸もあった。また、守山を舞台にした謡曲≪望月≫についても説明されていた。 うの家 宿場の中ほど、天満宮近くに格子と虫籠窓の町屋が建っている。 よく管理された外観の黒白のコントラストが美しい。 江戸～明治期に立てられた主屋や造り酒屋の蔵を改造してギャラリーやレストランとして活用されている。第75代総理大臣、宇野宗佑の実家という説明がされている。総理としてはちょっと不運があったようだが、実家は中々立派。この地の旧家だったのだと知った次第。 こぎれいな喫茶店「忍ぶ庵」でロールケーキとコーヒーをあじわう。 道筋には、次々と、石造道標や、案内板が置かれていて、この宿場の歴史を感じとれる。 慈眼寺、 観音があらわれ水難をまぬがれた最澄が乗っていた船の帆柱で観音像を彫って本尊としたと伝わる寺。 益須寺跡 案内板より抜粋 日本書紀にはいまから1300年ほど前の持統天皇七年（693年）に近江国益須（やす）郡の都賀山（つがやま）で醴泉（れいせん：味の良い泉）が出たと記され『醴泉、益須郡の都賀山に湧く』との詔書が出されると、多くの病人が治療のために益須寺（やすでら）を訪れたという。 この日本初の療養施設ともいえる寺は現在廃寺になっており、寺域などの詳細は不明。、発掘調査などから奈良法隆寺の再建時の瓦と同種のものが出土、法隆寺とも関わりが深かったことが伺えるのだとか～～ 馬路石邊神社 道路わきに「馬路石邊神社社標」が建っていたので、桜並木の奥へと入ってみた。思いがけなく大きな神社があった。馬路とは古代この地が駅（うまや）だったことに由来している。この地域を吉見加宿という。加宿とは宿駅に隣接した村のことで宿駅に人馬が不足した時に加勢する村ということらしい。 野洲川橋 野洲川は鈴鹿山系の御在所山に源を発し琵琶湖に注いでいる。昔、河口に八つの州があったので八州川とよばれた。現在は美しい橋がかけられ、車の通行量も多いが、往時は仮橋で増水時は舟渡しだったという。 遠く近江富士(三上山）が美しい。 十輪院 橋を渡った先に十輪院というお堂がある。かつて野洲川を渡る旅人のために常夜灯に火をともしていたという。お堂の傍らに[『野洲川や身は安からぬさらしうす』と彫られた芭蕉の句碑が立っている。昔、野洲村では川の流れを利用した野洲晒布の生産が盛んだったという。芭蕉の句はその労働の大変さを詠っているのだろう。 十輪院のむかいに、多くの石仏が集められて一角があった。旅人の供養だろうか～～？ やがて路は東海道本線のガード下をくぐり、古い酒蔵、八幡神社や寺のある道をいくと広い交差点にさしかかる。 背くらべ地蔵 鎌倉時代の石仏が並び、子供の成長を願って背比べさせたととういう伝承がある。 朝鮮人街道との分岐点 交差点から200メートルほど進んだところが中山道と朝鮮人街道の追分。 以前、近江八幡へ行った時にも朝鮮人街道があったのを思い出す。彦根へとのびる朝鮮人街道はこの場所で中山道に合流するのだ。 今日の中山道はここまでとした。余裕を持ってずいぶんのんびり歩いてきた。 時刻は15：30ＰＭ 帰りは朝鮮人街道を1キロばかり歩き、野洲駅から東海道本線で京都に戻ろう。 本日の歩行23000歩　(但し、ホテルから我が家まで。） 守山 宿場の南を流れる吉川越しに宿を見たところのようだが。 土橋手前を左川沿いに入って眺めたがその面影はない。 おことわり：浮世絵画像は合同出版「木曽街道六十九次」より。

ことば辞典
大将軍神社	大将軍は陰陽道の方位神であり、とくに建築や転居、旅行 などにおいて方角の吉凶を司る神であるため、長きにわたり民間の崇敬を集めた。明治 の神仏分離令にて祭神は素盞嗚尊と改められた。
産土神（うぶすながみ）	その人が生まれた土地の守護神で、一生を通じ、どこにいても守ってくれる神。 氏神とは区別される。
立場	街道の宿駅近くに設けられた休憩所を指し、宿泊は出来ない。
加宿	人家が少なく、人馬が出せない宿駅では隣接する村を加えて人馬の用を行わせたが、その隣村をさしている。