２泊3日の中山道旅。昨日の続きを歩こうと倉賀野駅に下りたのは９時過ぎ。この日は帰宅予定なので街道歩きは14時前後には切り上げなければならない。
いずれにせよ、上州と武州の境、神流川の群馬側を終点と決めた。


倉賀野宿について
この地は利根川につながる烏川の最上流の河岸場で、西上州、信越方面との水陸輸送の拠点として、河岸では信州、上州の米や産物を江戸におくり、塩や干鰯を持ち帰えり、大いに繁盛したという。倉賀野河岸跡は本陣の南方、烏川河岸にある。


★御伝馬人馬継立場跡
駅からまっすぐ南へ下る。突き当たりに倉賀野仲町山車倉があり、その角に碑が立っていた。
幕府の公用旅行者や大名などがその宿場を利用する際 に、必要な馬や人足を用意しておき、彼らの荷物を次の宿場まで運ぶ仕事をしていた。




★倉賀野宿本陣跡
廃業したと思えるスーパーマーケットの駐車場がその跡地。
石碑の隣に建てられた解説によると、元和年間（1615～23）から一貫して勅使河原家が任にあたってきた。中山道からやや奥まって北向きに建てられ、門構え、上段の間、玄関、を備えた格式高い造りで、建坪は１００坪あった。とある。
本陣跡の碑の隣には中山道倉賀野宿の碑とともに男女双体道祖神、石灯篭が立っていた。



★太鼓橋跡
下町と中町の境の五貫掘には現在の県道よりかなり低い位置に板の太鼓橋がかかっていたが、増水の度に流出。当時倉賀野の繁栄を陰で支えていた飯盛たちが二百両を寄進して石のアーチ橋を架橋したといった解説がされている。今の橋の下に回って当時の流れと思われる橋下を確認してみた。



★旧家
街道沿いに宿場の面影を探すのは難しいが趣のある旧家も見受けられる。

★日光例幣使道追分
「従是　右江戸道　左日光道」という道標。
例幣使とは日光東照宮の例大祭際し朝廷から奉幣のために派遣される勅使のこと。
日本橋に向かう中山道は右の道を行く。

道はすぐに県道１２１号となり、しばらくは産業地域を歩く。建物の向こうに山が霞んで見えるが、もう少しくっきりしないものだろうか・・・・
40分ほど歩いただろうか。陣屋跡があるという岩鼻町に付く。



★岩鼻陣屋跡
街道をから左へ100メートルほど入った所にあったのは運動場ほどの広場
小山の傍に解説板が立っている。陣屋跡だ。ずいぶん広い敷地だったとうかがえる。
寛政5年（1793）上野、下野、武蔵の幕府直轄領50万石を支配するための代官所が設置された。

小山の麓には石の牛。階段を上がると、天満宮が祀られていた。

岩鼻町の交差点からは下り坂。その途中にちょっと耳慣れない寺があった。
★北向子育観音。御堂内には如意輪観音が安置されている。

道はやがて土手に突き当たる。
標識のあるところから土手に登り右方向に土手を歩く。



広々とした河川敷を見下ろしながら、心地よく歩く。河川敷には雉もいるらしく鳴き声につづき
下りたつのを見かける。

先に見える、柳瀬橋で川を渡る。



広い河川敷、対岸近くでは広い畑も。

渡りきったら左方向にある土手の上のサイクリング道路行く。
左手の河岸にはかつて柳瀬の舟渡し場があり、1759年（宝暦9年）当時倉賀野、新町両宿で馬舟5艘、平田舟２艘を用意。渡賃は一人十文。武士は無賃だったらしい。


快適なサイクリング道路、（高崎伊勢崎自転車道）
河川敷には菜の花やムラサキハナナが美しい。西日本では見かけないオナガの姿も見ることができた。中山道の旧道は時々土手下を歩くこ
とになるのだがやがてまた合流するのでこの快適な道を進むことにした。


道はどんどん川から離れ、やがて、遠くに関越自動車道が見えてくる。
少し霞が晴れたような気がして、上毛の山々も見え出した。
上毛三山とは、赤城山、榛名山、妙義山とのことだが、もう少しくっきりしないと区別がつかないが、右が赤城山だろうか。


橋を渡ってから４０分ほど歩いた頃、左手の土手下に木立が見えてきた。

★お伊勢の森
かつてここには伊勢嶋村があり伊勢大神宮を勧進して村の鎮守としたらしいが烏川の洪水に見舞われ廃村となったらしい。今は畑地のなかに欅や桜などの古木と小さな祠が立つのみ。
大木の下で今日のお弁当をひろげひと休み。

昔は砂原村とよばれていたというだけに周りの畑地は白くて美しい。
洪水が砂を運んだといことだろうか。


（午後）

本庄４６ガードと書かれた関越自動車道の下をくぐる。
「倉賀野宿４．４㎞、新町宿０．８㎞と書かれた丸太道標。新町はすぐそこだ。

★２００ｍほど先に、宝暦１３年（1763）建立の供養塔が建っていた。烏川の洪水で亡くなった人々を供養したものらしい。
★豪農川端家
広い敷地に立派な建物が建っている。屋敷を取り囲む塀も、蔵もまた見事だ。
屋敷が国の有形文化財となっている川端家は江戸時代の豪農で、明治時代になると生糸の貿易で財をなしたという。この地域は立石新田といい、かつて一面の桑畑が広がる養蚕の盛んな地だったというが、住宅が連なる街道筋からは往時をうかがいしれない。


★伊勢嶋神社
元は稲荷であったために神社としては珍しい狐像。
★温井川をわたると
　新町宿西口。丸太の標柱が立っていた。★弁財天
往時は温井川の中の島にあったという。ほんの小さな祠
元来、水と豊穣の神とされた弁財天はここでも川に祀られていたということだ。


新町宿
上州七宿の東口に当たり,神流川の渡しを控えて、宿場が必要ということで１６５３年の落合村と笛木村を合わせて「新町宿」として成立したという。小宿ながら本陣２、脇本陣１が置かれた。
通りにはハナミズキが植えられ美しい。




★小林本陣、（標柱あり）が確認できた。

その先２００ｍほど行くと旅篭の高瀬屋があったというが見当たらず。新町駅への交差点を通りすぎ、少し先の左手に広場がみえる。

その奥に明治天皇が明治１１年の北陸東海巡幸の際に宿泊した建物があった。
意外と質素な造りにみえた。

★明治天皇行在所跡

★近くに高札場跡があるはずだが見落とし・・・。

★街道を少し入った所には寺も多い。その一つ、江戸和算の権威、田中文五郎信武の墓があるという専福寺に入ると、ご住職が本堂で般若心経を唱えてくださる。５０歳を過ぎてから仏門に入ったという住職は背筋を伸ばし呼吸する方法なども語られ暫し話しこむ。親しみやすい寺を知ってほしいということだった。こういった出会いも歩き旅ならではの楽しさ。

★八坂神社
武蔵国から上野国への入り口に当たるので疫病などの侵入などをくい止めるという願いで建てられたらしい。

昔、神社の門前に柳の大木があり、茶屋があったらしい。鳥居脇には柳にちなんで
「傘におしわけ見たり柳かな」の芭蕉の句が刻まれていた。



★見通し灯籠（復元）
上野国と武蔵国の間を流れる神流川は暴れ川で、出水の度に川筋を変え旅人を悩ますこととなった。そこで、両岸の宿では見通し灯籠を立て火をともして目印とし、旅人の安全を確保しようとした。
新町側では文化５年（1808）専福寺住職や町役人が寄付を募って石灯篭を建てようと発願、住人からも旅人からも寄付を募ったという。建立がなったのは文化１２年（1815）年のこと。

高瀬屋に泊った際に無理やり十二文の寄付をさせられたことがうかがえる小林一茶の日記が残っている。　「手枕や　小言いふても　来る蛍」　役人を蛍にたとえている。


ちなみに対岸の大光寺には往時の灯籠が残っているという。


あと５００ｍほど先は武州（埼玉県）となる。
神流川の手前、左手に神流川古戦場跡碑があるというのでさがしたが、移動させられたのか見つからなかった。次回また同じところを通るので探してみよう。

武州との境を越えるのは後日にして、列車の時間も迫っているので引き返し新町駅へ向かう。