２０１７年11月5日

大井宿から中津川宿へ

大井宿は江戸日本橋から４６番目。西に難所の十三峠をひかえ、更に岩村街道や秋葉道などが交差し、伊勢神宮、熱田神宮,善光寺への参拝客や物資の運搬、商人の往来でにぎわう美濃の宿の中で最もにぎわい栄えたのだという。宿内家数１１０軒で、うち、本陣１、脇本陣１、旅篭４１、人口４６６人であった

８時4０分、ホテルを出て、向かったのは恵那駅。
駅から南に延びる中央通り、2つ目の信号のところで中山道と交わっている。

角にあった大井宿の見取り図の掲示板によるとこの宿には６か所の桝形があり、整然とした街並みだという。確認しながら歩いてみよう。中山道を歩きはじめ、１００ｍほど先に幅広い大井橋がかかっている。下を流れるのは阿木川。橋の欄干に、広重の浮世絵がはめ込まれている。今まで通過してきたところのもあり、懐かしく眺める。

橋を渡った先で早速１つめの枡形に差し掛かる。

赤いポストのある角を右折し（２つめ）すすむと左手に毎年正月に煙草市が立ったという市神神社がありここで右折（３つめ）。その通りには大井村庄屋古谷家の豪壮な建物や、枡形の角には旅籠屋角屋（現、いち川）が並んでいる。・・・写真はふりかえったところ。

角屋　(いち川）

角屋のところを左折（４つめ）。この通りには、宿役人の林家、下問屋を兼ねた脇本陣跡、現在は資料館となっている庄屋古山家などが立ち並んでいる。現在、のれん祭りがおこなわれているらしくどこの軒先にも鮮やかな暖簾が飾られていた。

、宿役人の林家跡と資料館

道の左手角向かいに本陣の門が見えてくる。本陣母屋は焼失したようだが、表門周辺は焼け残り、この門は小さいながら、安土桃山様式をつたえているという。（9：20）

道は本陣のところで左折（5つめ）突きあたりの寺、延寿院横薬師を右折。これで６つの枡形を通過したことになる。横町川の小さな橋を渡ると、行く手に大井の高札場（復元）が見えてくる。このあたりを五妙坂というらしい。

高札場を左に見ながら道はつづく。「山本用水」と書かれた標識が建っている。下にはごく細い流れ。水不足に悩むこの地に阿木川から灌漑用水を引いた名残の様だ。
緩やかな寺坂といわれる登りの左手に石仏がたくさん並んでいる。上宿石仏石塔群で、悪病の宿への侵入を防ぐ願いでたてられたのだという。

この先階段上から、ふりかえると大井宿が見渡せる。宿と別れ中津川へ・・・

晩秋とはいえ、いいお天気、暑くなってきたので上着を脱いで先を急ぐ。恵那峡橋で中央自動車道を越えた先に又、石塔群が見えてくる。村内安全を願った長石塔が目立っている。
蓮華寺坂を行くと甚平坂５００ｍと書かれた道標。ほどなく関戸の一里塚（9：55）につく。

左手に民家を見ながら道は緩やかに登っていく。やがて、源頼朝の御家人であった根津甚平の墓といわれる宝篋印塔が祀られている根津神社がある。印塔は小さな社殿の後にあり花崗岩で高さが２ｍ以上もある大きなものだった。

甚平坂は今は公園になっていて、広重の浮世絵を彫りつけた岩の向こう、北方向のはるか遠くに御嶽山を望む。この日は山々の上方に肉眼でかすかに見えた。（10：05）

展望台右手に街道へ下る石段がついている。甚平坂は今は石段に変わっているということだ。そこを登ってくる人がいる。近隣の方の散歩路になっているようだ。恵那山は東にあるとありますが・・・と聞いてみた。下の道を進めば大きく見えますよとのこと。

公園の右片隅に犬塚、階段下に甚平坂、そして道沿いに馬塚と三つの石碑があった。
頼朝の命で信濃、桔梗ヶ原の八重羽のキジという怪鳥を鷹と犬を連れ馬に乗って退治に向かった甚平だったが、この地で馬は力が付き、さらに追いかけた犬も力尽き、村人によって葬られたといった伝承があるようだ。

甚平坂公園を後に、岡瀬沢、濁川２００ｍの道案内を見ながら進む。

途中、草むらの中に庚申塔がぽつんとたっている。このあたりは庚申信仰が厚く、今も庚申講があるという。教えてくれた通り、家並のむこうに恵那山が見え始める。ここから、中津川に至るまでこの山が旅路を見守ってくれることになるはず。

濁川に斜めにかかる橋に着く。傍らの掲示板に、江戸時代に集落として独立した一帯の農家や住宅にとってこの濁川がその生活と生産の維持発展になくてはならないものだった。皆で美しく保とうといったような内容が書かれていた。

交差点に建つ岡瀬沢永代燈には、ひだり秋葉道と刻まれている。秋葉道は秋葉山への参詣道であり、物資運送のための「うしみち」でもあった

田んぼの真ん中、大きな桧の樹の下に二つの石祠を見つける。社宮司というらしく、土地の神の信仰で木の神とされている。この信仰は初めて聞いたが、中部から関東にかけ広くあるという。こちらによくある「地神」と同じようなものだろうか。

広久手坂を下っていくと、路傍に三面三臂馬頭観音が立っている。珍しい。

下りきると、是より大井と刻まれた大岩。この辺りが大井と中津川市の境界。周辺は長閑な田園

恵那山は右方から正面から、ずっと街道を見下ろしている。

甚平坂からははっきり見えなかった御嶽山もくっきりと見えてきた。空が美しい！

茄子川村の篠原茶屋本陣跡
茄子川は間の宿であったという。篠原家は村方役人と尾張領の庄屋をかねていた。
角には秋葉山常夜燈がたっている。（前の通りは遠州秋葉道）

尾州白木改番所跡
木曽川筋の白木番所で、抜け荷を監視、量目を厳しく点検した。

長閑な田園の向こうに恵那山が堂々と鎮座

茄子川高札場跡を過ぎ、坂本橋をわたるとその先は急坂。県道４２０号のガードをくぐると右手に、石仏が１０基並んでいる。このあたりは茄子川村とこの先の千旦林村の境で、坂本立場があり、古くは東山道の宿駅だったそうだ。今も水をたたえる馬の水飲み池ものこっている。

自然石で守られているような三面三臂馬頭観音

千旦林地下歩道をくぐった先に、三ツ家の一里塚跡の標石がある。日本橋より八十六里とのこと。単なる標石だが、背景がいいので写してみた。

岡田将監（美濃代官）の塚、中平神明神社の解説板、道の三叉路に置かれた手差し道標、
二体の馬頭観音、千旦林村の高札場跡、明治６年に開校したという松風義校跡の解説板、中央本線踏切の向こうには坂本神社八幡宮、・・・・と
著名な寺などはないにしてもこの街道には往時をしのぶ跡が数多くあり、現在は道行く人ともめったに出会えないがかつては人の往来の多かったことがうかがえる。

１６５７年に建立されたという六地蔵石憧。六面に地蔵が浮き彫りされている。（12：50）

小石塚立場跡・・・「またあった」という感じだが、大井、中津川間には立場が多いように思える。

上宿の一里塚跡と石仏石塔群。
石仏の中には「これより苗木道」と刻まれ道標を兼ねた双頭一神道祖神も含まれている。
この先で、道が左右に分かれ、左へ行くと苗木道。有名な苗木城へと通じてるんだろうか。

Ｓ字状に折れた下り坂に差し掛かる。小手の木坂といわれる。斜めに付けられた階段を下ると。自然石の道標と解説板があった。
駒場といわれるその地より上宿の一里塚間はかなり急坂だったようだが、明治になって馬車が、更にバスが通るようになってからはｓ字型に道が整備されたようだ。

小手の木坂の先は駒場村。
復元された高札三枚が民家の壁に貼られていたが、内容を読むと、主に宿の紹介という感じだった

中津川を渡る。中津川は恵那山に源を発し、流末は木曽川に落ち合う。　（13：50）・・・・・・浮世絵

この先が中津川宿の京口で高札場があったというが、それらしきは見当たらず。

中津川宿は、北に苗木城下、東に馬籠、妻籠といった木曽の宿並をひかえ、物資の集散地として栄えたという。三と八のつく日に六斎市が立ち、東濃の中心としてにぎわったという。
１８４３年の宿内家数は２２８軒で、本陣１、脇本陣１、旅篭29、人口９２８人であった。

坂の上に目をやると、宿の町並みが始まる。右は１６０１年創業の銘酒「恵那山」の蔵元「はざま酒店」