標高５２９メートルに位置し､三方をタホ川に囲まれたトレドは紀元前２世紀にローマに征服された時には
すでに城塞があったという。560年西ゴート王国の首都となったが、８世紀から４００年にわたりイスラム教徒に支配された。
スペイン王国が成立し、レコンキスタが終了する１４９２年までユダヤ､イスラムがこの地の経済をにぎっていたという。
イスラム､ユダヤ､キリスト教文化が交錯したトレドには
クレタ島生まれの画家､エル・グレコを魅了した中世の景色がほとんどかわることなく残っているということだ。
思い出せば私がトレドを知ったのは３０代のはじめだった。
水彩画連盟に属しておられた三橋兄弟治氏の作品集のなかにあった「トレド風景」
それが忘れられない。
一度は自分の目で見てみたいと思った風景が目の前に広がった。
タホ川の対岸から見たトレドの町
左にカテドラル､右にアルカサルがそびえている。
なんという橋を渡ったかはちょっと思い出せないが旧市街に入る。
伝統工芸であるダマスキーナ(金銀象嵌細工）の老舗に立ち寄る。
とても美しく手づくりの本物はやはりいい！
この工房ではたくさんの剣も作られていた。
カテドラル
免罪の門のあるファサードと尖塔
フランス･ゴシック様式の大聖堂は１２２６年から１４９３年にかけ建設されたスペインカトリックの総本山。
撮影禁止の内部は荘厳な感じがする。
今までフランスなどで見た聖堂に比べステンドグラスが少ないように思ったが
中央祭壇裏にトランスバレンテがあり後方からの光で聖母像などが美しく浮かび上がっていた。
また宝物室には金銀宝石で細工された聖体顕示台を聖具室ではエルグレコの宗教画を見ることができた。
カテドラルを出て建物に押しつぶされそうな細い路地をとおり
サント・トメ教会へと歩く。
振り返ったらシナゴーグがありますと聞いた。
トランシスト教会だろうかと振り返ってみたが
路地の向こうに写っていたのはカテドラルの尖塔。
サント･トメ教会
モスクを１４世紀に改装したサント・トメ教会はモサラベ様式の塔(マウス）をもつ。
教会自体はそう大きくはないが
エル・グレコの傑作「オルガス伯爵の埋葬」で有名。
入場しその絵の前に立つ。
敬虔な人物であったためにその葬儀に聖アウグスティヌスと聖ステファヌスが
現れたとされる１４世紀の伯爵の埋葬場面を エル･グレコは１６世紀の設定で描いている。
画面は､横に並んだ参列者を境に上下に分かれ、
地上の静かな葬儀とはまったく異なる調子で描かれ
天上のキリストに向って衣も､雲もすべてが炎のような動きを見せ
荘厳な雰囲気に満ちている。これこそマニエリスムといった作品だ。
メモ・・・・モサラベ様式
中世初期，イスラム統治下のスペインで行われたキリスト教美術をさす。
モサラとはキリスト教徒でありながら文化的にイスラム化したスペイン人のこと。
イスラム美術と伝統的スペイン美術の融合したものであるが、全体に東方的装飾性が濃い。
みやげ物店の並ぶ石畳の旧市街を行く。
市街を抜ける頃､美しい教会が見えた。
サン･ファン・デ・ロス･レイエス教会
１４７６年のトロの戦いでポルトガルに勝利したのを記念して
カトリック両王（アラゴン王フェルナンド２世とカスティーリャ女王イサベラ）により建設された。
解放を表すしるしに壁面に解かれた手錠がかけられている(窓の両側）
ゴシックとムデハル様式のミックスでイサベル様式というそうだ。
教会の向かい側にはイサベル女王の像が立っていた。
メモ・・・ムデハル様式
イスラム文化の様式を取り入れた中世スペインの建築や装飾の様式
12世紀から16世紀にアラゴンやカスティーリャで盛んにもちいられた。
ムデハルとはキリスト教徒の勢力下にいた回教徒のこと。
キリスト教徒に再征服された後のイベリア半島で自分達の信仰・習慣を維持しながら、
被支配者として残留を許可されたイスラム教徒をさす。
1085年のトレド陥落以後のレコンキスタの進展で、ムデハルの数が増加した。
彼らはスペインに同化、イスラムの優れた文化・学問・技術を中世スペイン、ひいてはヨーロッパ諸国に伝達した。
多くはコルドバ・セビリア・トレド等の大都市に住み、
建築・革細工・金属細工・彫刻・織物・文筆に従事、イスラム文化と中世スペイン・キリスト教文化の融合をなした。
サン･マルティン橋
タホ川にかかる石橋は１３世紀に作られたこの橋と､自動車用に近代になって作られたアルカンタラ橋がある。
サン･マルテェン橋の両側には堅固な門があり自然の要塞でもある市街をまもっている。
橋の上からみる美しい流れ
バスの中からのサン･マルティン橋
短時間でアルカサルはじめまだまだ見残したところはあったが
トレド遠景を見ただけでもう十分堪能できた。お天気にも恵まれたいい１日だった。
夜はホテルで魚貝類のスープをいただいた。これは美味しかったが
デザートの甘いシナモンシュガー入りのプリンにはまいった。
甘いものは思いっきり甘くということらしい！
コンスエグラへ